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KOBEZINE

FEATURE

2020.7.16

コロナに負けてたまるか!
SNS活用で南京町の「素の姿」を発信〜“化学反応”を起こした、南京町の底力

Text_Satsuki Yamauchi / Photo_Makoto Aizawa (ADW Inc.)

新型コロナウイルスの影響により、大打撃を受けた飲食業界。休業や廃業に追い込まれる店も相次ぎ、老舗や人気店も、かつてない脅威にさらされました。

そんな状況さえ吹き飛ばしそうな勢いを感じるのが、神戸元町の南京町商店街振興組合の皆さん。「それおもろいやん!」「絶対喜ばれますよ!」と、次々とアイデアを形にして、SNSで動画コンテンツを配信。「おうちで太極拳」は、再生回数1万8千回を突破(※2020年7月10日現在)。

何より印象に残るのは、メンバーの明るさです。溢れんばかりのバイタリティは一体、どこから来るのでしょうか?座談会を通して見えてきたキーワードは「前向き」でした。誰にでも生かせるヒントが詰まった、思わず元気になるトークをお楽しみください。

※今回の座談会は、ソーシャルディスタンスに配慮して、なでしこ屋さんの屋上にて、トップと最後の写真撮影の時以外は全員マスク着用で開催しました。

ベテランから若手まで、組合のメンバーたち

座談会参加者の一人目は曹 英生(そう・えいせい)さんです。1915年創業、「行列ができる店」としておなじみの元祖豚饅頭専門店「老祥記(ろうしょうき)」の3代目。南京町商店街振興組合(以下、組合)で理事長を務めています。

名実共に重鎮とも言える存在ですが、物腰はいたって柔らか。「今回のコロナでは、若手がよう頑張ってくれて」「ぼくばっかりしゃべったらあかんなぁ」と、若手メンバーを“立てる”懐の深さが印象的です。それでいて「やれることは全部やろう」と考えが柔軟、意欲的で頼れるリーダーです。

曹 英生(そう・えいせい)さん

老祥記(ろうしょうき)

続いては、劉繕雲(りゅう・ぜんうん)さん。1986年創業、名物料理「焼鶏(しょうけい)」で知られる「劉家荘(りゅうかそう)」2代目です。劉さんが22歳のときに早世した父親のあとを継ぎ、暖簾を守り続けています。

組合での担当は、事業部と財務部。行動の早さと、人を巻き込む力はピカイチ。テンポの良いパワフルなおしゃべりで、場の空気を盛り上げるムードメーカーでもあります。

劉繕雲(りゅう・ぜんうん)さん

劉家荘(りゅうかそう)

そしてもう一人が、池端 浩美(いけばた・ひろみ)さん。20~30代女性に人気のゲストハウス「神戸なでしこ屋」のオーナーです。

27才で脱サラし、夢だった世界一周を果たした行動派の池端さん。組合では広報活動を担当。本人いわく「南京町では新参者」。でも、池端さんのフレッシュな目線と発信力が、南京町復活の起爆剤になったと言っても過言ではありません。

池端 浩美(いけばた・ひろみ)さん

ゲストハウス「神戸なでしこ屋」

ゴーストタウンになった南京町

さて、今回の座談会のテーマは「新型コロナでどうなった?」です。

今や、コロナという言葉を聞かない日はありません。突然の一斉臨時休校、大規模イベント自粛、一部業種への休業要請。ここまで影響が大きく、そして長期化するとは、一体誰が予測できたでしょうか?

大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で、集団感染が起きたのが2020年2月。意外なことに3月の南京町は、観光客でにぎわっていたのだそう。

曹さん「3月になったら、若い人たちは休みでしょ。どんどん来るんですよ。海外旅行に行かれへんから、国内の近場旅行みたいな感じ。」

手ごたえと希望の光を感じる中、吉村大阪府知事による「大阪と兵庫の往来自粛」の呼びかけから怪しい雲行きに。そして3月末、タレントの志村けんさんの訃報を機に、南京町は急変。およそ9割の店がシャッターを下ろし、人通りが消え、街はまるでゴーストタウンのようになったと言います。

緊急事態宣言直後の南京町

曹さん「うちは4月だけで1500万円の赤字。10か月続いたら1億5千万円。うちの店もあかんなと思った。商売を始めて40年、はじめて感じた危機感やったね。」

劉さん「人を呼ばれへんもん。呼んではいけない、来てはいけない街。店の売上、どんどん落ちましたね。」

池端さん「うちはゲストハウスなので、絶望的な業態なんですよ。3月から5月は稼働10%以下。真剣に廃業も考えました。」

南京町はかつて、阪神・淡路大震災も経験した街。でも「あのときとは様相が違う」と、曹さんは言います。

1995年1月17日。確かに街は、一瞬にして変わり果てました。でも、仲間と団結してひとつずつ立ち上げ、動いていけば何とか復興できるという確信があったそう。

震災の影響で中止になった「神戸まつり」を、元町商店街と共同で「神戸五月まつり」としてその年の5月に自主開催。いわば「自粛を自粛する」。行動を起こすたびに「この時期によくやってくれた!」と喜ばれました。自粛するのではなく、どんどん動くことが復興になったのです。ところが…

曹さん「今回のコロナは、とにかく自粛せなあかん。阪神・淡路大震災のときとは質の違う恐怖感がありましたね。なんぼもがいても上がれない、底なし沼にはまったみたいな感覚。」

押しも押されもせぬ老舗「老祥記」の曹さんですら不安を感じるほど、先行き不透明、絶望的とも言える状況でした。

ちなみに、三宮一貫樓は以前から通販やテイクアウトなどにも力を入れていました。この二本柱があったおかげでレストランを一時閉めても、屋台骨は揺るぎませんでした。知らない間にリスク分散ができていたのです。

絶対に「つながり」を途切れさせたくない!

でも、先が見えないからと落ち込み、あきらめる組合メンバーではありません。思い立ったのはSNSの活用でした。

池端さん「お店に来られない期間が続くと、つながりが消えちゃうなって思ったんです。でもSNSを使ってメッセージや動画を配信し続けたら、関係は途切れない。つながりが続くことを大事にしたかったんです。」

時を同じくして、SNSの必要性と可能性を感じていた劉さんは神戸市に掛け合います。補助金制度を活用して、ソーシャルメディア活用コンサルティング会社Be love companyの武田 共世(たけだ・ともよ)さんにサポートを依頼。アドバイスを受けながら、SNSを最大限活用する道を模索します。

そして池端さんが「南京町チャンネル」を立ち上げ、YouTubeで動画配信をスタートしました。
神戸・南京町 Kobe Nankinmachi – YouTube

ここに劉さんのお店「劉家荘」が、名物料理「焼鶏」の作り方を公開したところ、なんと注文が殺到。

劉さん「アップする前は、半信半疑やったんですよ。池端さんが『劉さんとこの焼鶏つくってよ』って言う、でもぼくらからしたら、いつも作ってる料理でしょ。そんなん見ておもしろいか、って。」

池端さん「絶対喜ばれるって思いました。だって、分厚いまな板とか中華鍋とか、見ているだけで楽しいじゃないですか!」

劉さん「すぐ注文が入り始めて、ほんまビックリしましたわ。彼女がポロっと言うたことが、大体形になってる。それ以来、こういうパターンなんです。」

こうしたプロのレシピ公開はシリーズ化し、家庭の主婦にも好評を博しているそうです。

再生回数1万8千回!誕生のきっかけは?

メンバーが「いまだにバケモンみたいな再生回数」と舌を巻くコンテンツが、「おうちで太極拳」です。

「おうちで太極拳」は、劉さんの知り合いである兵庫太極拳協会会長の麦 兆民(ばく・ちょうみん)さんに依頼し、南京町の広場で太極拳を指導していただくという企画の動画です。再生するとゆったりとしたBGMが流れ、「首を左に回す」「正面を見る」など、動作が一つひとつ進んでいきます。

シンプルですが、初心者にも分かりやすい内容で、画面の前で一緒に動作をしていくと、身体がほぐれ、ぽかぽかといい気持ちになります。

この動画の再生回数はなんと、約1万8千回(2020年7月10日現在)。そして驚くべきは、再生回数の多さだけではありません。注目度の高さにも圧倒されます。

撮影前、曹さんが知り合いのメディア関係者全員に電話をかけたところ、撮影当日テレビカメラが殺到。その日の夕方から1週間、ずっと南京町の広場で太極拳をする麦さんの様子がテレビで流れたそうです。

大成功を収めた「おうちで太極拳」ですが、ではどのようにコンテンツの企画を進めたのかが気になります。市場調査を重ねて戦略を練った?綿密なリサーチをした?いえいえ、意外なことに、メンバーでZoom会議していた最中の何気ない一コマがきっかけでした。

曹さん「退屈やから、体操しながら会議聞いとったんです」

劉さん「そうそう、理事長が急に言うたんですよね。『みんな、外出自粛が続いて運動不足やろな~』って。で『それ、いけるで!』ってなって」

池端さん「それで、すぐ行動に移して。バズりましたよね!」

なんと息の合う皆さんでしょうか。

劉さんや池端さんたち若手がアイデアを出し、形にする。そして曹さんがいわば「南京町の顔」としてメディアに働きかけより多くの人を巻き込む。その見事な連携プレーには、こんなこともありました。

劉さん「そうそう、宝珠寺(ほうじゅじ)さんに『新型コロナウイルス終息祈願祭』をお願いしたときも、ビックリしましたわ。最初は、僧侶の方3人ぐらいが来るっていう話でしたやん?」

曹さん「宝珠寺さんも、なんかやりたい、世のために尽くしたいって言うて、ボランティアで来てくれはって。」

劉さん「3人ぐらいって聞いてたのに、前日、理事長から電話かかってきて『劉くん、明日19人になった』って。南京町広場に、僧侶の方が19人ですよ、19人!」

激動の日々を共に過ごしてきた皆さん、エピソードが尽きることはありません。

コロナで悩みもがいた日々を振り返り、メンバーが口をそろえていうのは「絆が深まった」ということ。皆さんの口からは、学び、絆、団結……前向きなキーワードがぽんぽんと飛び出します。

曹さん「ええ学びになったね。」

劉さん「ほんま、絆が深まった。」

池端さん「団結力が増しましたね!」

動画コンテンツ作成に関しては最初は素人だった皆さんが、専門家のアドバイスを受けながら、ワイワイ楽しくやっているうちに、どんどん自作できるコンテンツが増え、クオリティも上がりました。

更に驚くのは、そのスピード感。1週間に1本ペースでやるべきことを決め、企画を次々と形にしていきました。

この圧倒的なスピード感を「商売人ならではの行動力」と言ってしまうのは、簡単なことかもしれません。でも、状況がひっ迫する中、いや目の前が暗い中だからこそ、スピード感を大事に動く。このことは、どんな仕事であれ、誰もが忘れてはいけない心構えなのかもしれません。

中止するのは簡単、でも「そんなん面白くない」!

緊急事態宣言の解除により、臨時休業していた店や施設も徐々に再開し、日本は少しずつ日常を取り戻しつつあります。とはいえ全国各地から、祭りや行事の中止決定のニュースが聞こえてきます。南京町では、今後どうする予定なのでしょうか?

曹さんは「行事を中止にするのは、それはそれでしかるべき対策やと思う」と前置きした上で、10月の「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」を決行予定であることを教えてくれました。そこにあるのは「プロとしての心意気」です。

曹さん「中止するのは簡単なんですけどね。でも、新たなやり方があるはず。密をつくらない工夫をして、その中でどう盛り上げるか?まだアイデア段階やけど、たとえば獅子舞の無観客ライブ配信とか……模索していかなあかんなって思うし、チャレンジしていきたい。」

中秋節だけではありません。今年で10回目を迎える予定だった「KOBE豚饅サミット®」も、規模やスタイルを検討した上で、「9.5回」として実施する予定です。

「KOBE豚饅サミット®」は、「老祥記」「四興樓」「三宮一貫楼」の老舗が中心となり、毎年開催している人気のイベント。期間中、全国から豚まんの名店が集結し、神戸の街が盛り上がります。

豚まん旦那衆の男気溢れる一大イベント「KOBE豚饅サミット®」 | KOBEZINE(コーベジン)

曹さん「イベントをやめるやめるって言ったら、果てしなく面白くなくなります。三密をつくらず、ソーシャルディスタンスを守りながらできることを考えていくのが、われわれプロ集団ですよ。」

できることを考えるのがプロ集団。一同、曹さんの言葉にしびれました。

緊急事態宣言解除後、徐々に人通りが戻りつつある南京町

世界のビールが楽しめる「THE DECK」もオープン!

こうして前を向いているのは曹さんだけではありません。池端さんは2020年7月17日、世界一周した経験を生かし、世界のビールが楽しめる「THE DECK」をなでしこ屋の屋上にオープンする予定です。

池端さん「こんな状況ですけど、オープン日は変えません。」

力強い言葉が出るのは、メンバーとの絆の中で大事なことに気付いたからこそ。コロナの前の池端さんは「旅行で神戸に来る人」だけにフォーカスしていたと言います。でも、旅行客が激減する中、地元の人に愛される店をつくりたいと、心底思ったそうです。

池端さん「廃業も考えました。でも、コロナは不可抗力。ここで判断するのはまだ早いな、もっとあがこうっていう気持ちがありまして。何より私『南京町ラブ』なんです。たくさんの人に「THE DECK」に来てもらって、楽しんでほしい。」

劉さん「フードは出さず、持ち込みOKやねんなぁ?そしたら出前もありやな。老祥記さんの豚まんと、劉家荘の焼鶏、三宮一貫樓さんとこの豚まんと…」

曹さん「それ最高やで!」

劉さん「絶対に流行るで!」

池端さん「出前、ぜひぜひお願いしたいです」

テンポの良い掛け合いに、絆の強さがにじみ出ます。ちなみに「THE DECK」のコンセプトは「船」。多種多様な人が集まり、いろいろな時間を過ごす船は、出会いと発見がある空間。世界一周したオーナーが選ぶ世界のビールで、海外旅行気分が味わえる「THE DECK」。南京町の、新たな名所になりそうです。

決してダメ出ししない、すべて受け入れる!

とにかく前向きなメンバーの皆さんは成果を出し続けています。そして、うらやましいほど仲がいい。そのカギを握るのは、一体、何でしょうか?その答えのヒントが、池端さんの口から飛び出しました。

池端さん「組合の皆さんは、新参者の私が言ったことでも、全部受け入れてくれるんです。」

池端さんが「神戸なでしこ屋」のオーナーになったのは、約一年前のこと。しかも飲食業を営んでいるわけではありません。にもかかわらず、

池端さん「私がレシピを公開しましょうって提案したら、皆さんがすぐ『やろうやろう』って言ってくださるんです。すごく受け入れる間口が広くて寛容で、多様性を受け入れてくれるのがすごいなって思います。」

出たアイデアを否定せず、まずは受け入れてみる。とにかく、新しいことをおもしろがる精神。なんとすばらしいのでしょうか。

曹さん「ダメ出しをしない、まずは全部受け入れる。これが大事やな。」

劉さん「意見を言うてくれた人、大事にしないと。」

曹さんと劉さんの言葉を聞き、きっと組合で長年伝統になっている文化なのだと思ったら、意外なことを打ち明けてくれました。

曹さん「南京町も一時、閉鎖的な時があったんですよ。どこの組織でもよくある話やと思うけど、メンバーが高齢化して、しかも同じ顔ぶれのままで。組合の活動もしんどい、みたいな時期があって、気付いたらダメ出しばっかりで……。」

今の姿からは、とても想像できません。何がきっかけで変わったのでしょうか?

曹さん「2018年の『南京町生誕150年』ですわ。その時、思ったんです。何も中の人間だけでやらんでも、やる気がある外の人間を呼んだほうが活気が出る。いろんな考え方もできるっていうのを発見したんです。」

長年「KOBE豚饅サミット®」を運営してきて手ごたえを感じていたことも、曹さんの背中を押しました。南京町での歴史が長いかどうかは、関係ない。やる気がある人に、組合活動に参加してもらう。ダメ出ししない……。

方向転換して進んできた結果は、これまで見てきた通りです。メンバーの表情からは、声にならない「楽しい!」という声が溢れてくるかのようです。

新しい風が吹いたことで、南京町は大きく変わりました。外でみんな呼んでワイワイがやがや楽しくやっていると、それまでは参加しなかった昔ながらの店の人たちも、吸い寄せられるかのように参加するようになったそう。「やっぱり楽しいのが一番」と、曹さんは実感を込めながら断言します。

劉さん「コロナのときは売上も落ちてヒマやったけど、おもしろかった。強くなれた、みんなで一緒にいられて。」

池端さん「新しいことがいろいろできましたね。お店を一軒ずつ訪ねて回る街ブラもぜひシリーズ化したいです!」

曹さん「そうやね、おいしいメニューや食べ方、働いている方の想いも紹介したらええやろね。考えたら今回のコロナのせいで、個人個人がいろいろなアプリの技術を吸収したって感じやな。その中で化学反応して、新たな自分の力量見つけて。ほんまおもしろい。」

逆境の中でもめげず、前向きに行動し続けた南京町商店街振興組合の皆さん。気付けば一人ひとりが力をつけ、またとない財産ともいえる「絆」を手に入れました。これからも団結力を発揮して、より愛される南京町をつくっていくことでしょう。

三宮一貫樓 安藤からひとこと

今回の座談会いかがでしたでしょうか?お集まりいただいたメンバーは性別、年代、ルーツ(中・台・日)もバラバラ。まさにこれからの社会が目指すべきダイバーシティがそこにありました。

かつての戦災、震災、未曽有の禍に見舞われても不屈の精神で立ち上がって来た南京町さんの強さを改めて垣間見たような気がしました。この度の新型コロナウィルス禍は今だ先の見えない状況は続いておりますが、切り抜けるヒントが満載の今回のKOBEZINEではなかったでしょうか。

明るく楽しく、どんなこともネタに変えてしまうエネルギーを少しでも読者の人と分かち合えたらとても幸せに感じます。これからも南京町さんの活動から目が離せません。

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