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KOBEZINE

REPORT

2019.1.5

豚まん旦那衆の男気溢れる一大イベント「KOBE豚饅サミット®」

Text&Photo_Masami Iwasaki / Edit_Tomio Ito

「日本の元気を神戸から」をタグラインに、2011年からスタートした「KOBE豚饅サミット®」。神戸の老舗豚まん店「老祥記(ろうしょうき)」「四興樓(しこうろう)」「三宮一貫樓」の3店舗のキーマンが発起人となりはじまったこの一大イベントが、今年も神戸市内外の豚まん専門店や中華料理店が集結して開催されました。

全国各地でパン祭りやラーメンフェスタなど、食にまつわるさまざまなイベントが開催されていますが、「KOBE豚饅サミット®」では、限定豚まんや、他店舗とのコラボレーションなど、この期間でしか食べられないオリジナル創作豚まんを味わうことができます。

8回目となる今年の豚饅サミットは、全4日間の開催。神戸市内をはじめ、熊本、仙台、横浜、長崎からも含め、全16店舗の豚まん店が出店しました。

11月8日に前夜祭会場としては初となる三宮センター街で前夜祭を開催し、11月9日に南京町広場と曹家包子館、11月10〜11日に大丸神戸店北側外廊と南京町広場、曹家包子館を会場に開催されました。今年も1日1万人規模のお客さんが来場する盛況ぶりです。

たくさんの入場者であふれる南京町広場

11月9日に行われた南京町広場でのオープニングセレモニーでは、発起人である老祥記の曹さん、四興樓の葉さん、そして三宮一貫樓常務の安藤さんの3名をはじめ、兵庫県や神戸市などからの来賓が挨拶され、前夜祭のKOBE豚饅娘コンテストで選ばれたお二人がチャイナドレス姿で登場後、テープカットが行われました。

そして、開会前から今や遅しと行列をなしているお客さま達とともにカウントダウンを行い、「KOBE豚饅サミット®」開始となりました。

オープニングセレモニーの様子

―KOBE豚饅サミット®ストーリー―
はじまりは、閑散とした神戸の町。

豚饅サミットのはじまりは遡ること8年前、2010年の秋のこと。三宮一貫樓の安藤さんは当時大阪で会食する機会が多く、この日は金曜夜の終電で神戸へ戻りました。

「大阪は人が多くて賑わっていたのに、神戸に着いたら人気がなく閑散としていたんです」。そんな街の姿から、神戸の活気を取り戻すために何かできないかと思い立ちます。

一人でできるのは豚まんを作って販売すること。でも、神戸には豚まん名門店が多いと気づき、まずは豚まん発祥店である老祥記さんに相談するべく、共通の厨房屋さんにつないでもらいました。

それまで面識のなかった老祥記の曹さんは、世代も年齢も目上の方であり緊張もありました。「でも、想いを伝えると『面白いね』と、四興樓さんにも声をかけてくれたんです」。そして翌年の年明け早々に全員が集まり、そこで”11”が並ぶ「2011年11月11日」にイベントを開催することが決まりました。

KOBE豚饅サミット®限定の豚まんを買い求める人々で賑わう南京町広場

ところがその後、2011年3月11日に東日本大震災が発生します。阪神淡路大震災から16年後のことでした。この時に、イベントの立ち位置が変わったのだと安藤さんは言います。

「復興の定義はさまざまあるけれど、神戸の街自体は綺麗になりました。未曾有の災害からここまで元気になれた神戸は実はすごいんじゃないかと。それで、『神戸を元気にする』から『日本の元気を神戸から!』というスローガンに変わっていったんです」。

そこで、2011年の第一回目の「KOBE豚饅サミット®」の売り上げを原資に、翌年の1月17日(阪神淡路大震災発生日)に「KOBE豚饅サミット®」実行委員メンバーで宮城県名取市に炊き出しに遠征しました。この活動はそれ以降も継続しています。

「炊き出しの際に現地で尽力してくれた仙台の豚まん屋さんが、2年目以降の豚饅サミットに出店してくれましたし、2016年に発生した熊本地震では、益城町で炊き出しを行いましたが、このときも熊本の豚まん屋さんが豚饅サミットに出店してくれました」。

まさに、「KOBE豚饅サミット®」をきっかけとなって、“地震がつないだ縁”とも言える輪が、神戸を越えて各地に広がっていきました。

発起人の一人三宮一貫樓の安藤さん

自分たちがよくならなければ、町はよくならない。

毎年発売している「発起人豚まんBOX」は、発起人の3店舗の自慢の豚まんをひとつずつ、計3つをパックにしたものですが、それぞれが毎年工夫を凝らしてオリジナルの創作豚まんを開発しています。

老祥記は、他店とコラボレーションした豚まん。四興樓は、梅やサルサソースなど、これまでと違った味わいの変化球の豚まん。三宮一貫樓は、高級食材を使用した豚まん。

「どれも普通ならこの価格ではとても無理、もはや原価割れ上等です(笑)。けれど、それでいいんです。まずはお客さんが喜んでくれますし、このイベントをメディアも取り上げてくれますしね」。

イベントの目的は目先の売上ではなく、お客さんに喜んでもらい、豚まんを通じて神戸から日本を元気にすること。その想いは、創作する豚まんひとつひとつに表れています。

イベント当日限定の「KOBE 豚饅サミット 発起人 詰め合わせセット」

また、「KOBE豚饅サミット®」に出店する店舗を選抜する際は、信頼のおけるお店という条件はあるものの、基本的には応募していただけたら大歓迎、実行委員会が審査するようなことはないそうです。

こうして、有志が趣旨に賛同して年に一回、一堂に会するわけですが、特に特筆すべき点は「KOBE豚饅サミット®」が市や県からは後援があるだけで、助成金には一切頼らずに発起人自らリスクを背負って自費で開催されていることです。

「すべて主催店の手弁当と売上で行っています。助成金を申請して人のお金でやったら、いろいろ紐づいてくるし、やりたいことができなくなってしまう。第一回目は、発起人で100万円ずつ出し合って、あとは売上でやりくりしました」。

神戸の町で商いを長年続けてきた者の強い信念を、そこに垣間見た気がします。

「神戸を盛り上げたいという人はいっぱいいますが、周りや制度が良くなれば自分たちも良くなると言う人も多い。でも、そうじゃないんです。まずは自分たちがよくならないと、神戸はよくなりません。それを共通言語で話せる人と巡り会えたことがよかった。彼らは言ってみたら商売敵。でも、そこで嫌い合ってたらなんのつながりも広がりもなかった。そういう意味では、幸せな事業をやらせてもらっているという感覚があります」。

「KOBE豚饅サミット®」イベント告知ポスター

「KOBE豚饅サミット®」の可能性。今後はより開かれる機会へ

「KOBE豚饅サミット®」を継続して8年。今後について安藤さんはいろいろと模索しています。

「正直なところもう少し他業種が入ってほしいですし、今はイベント色が強いのでもっと社会的な側面を出して行きたいと探りながらやっています。例えば、豚まんの店を新たに開業してチャレンジしたいという人が出てきてもいいなと思いますし。さらには、2月の恵方巻きの行事のように、神戸には中華料理店も多いですから『11月は豚まんの行事』というようなムーブメントになったらいいなとも思います」。

大丸神戸店1F北側外廊にも様々なお店が出店します

それは、「豚まんの文化を根付かせていくこと」なのではないでしょうか。「KOBE豚饅サミット®」は今のところ販売中心ですが、お客さんが豚まん作りを体験する教室や、老舗店のトークショーなど、アイデアと可能性は無限大にあり、今後さまざまなコンテンツが生まれそうです。

「とりあえずは、10回開催することを目指しています。継続することで、見えてくるものもありますし、テコ入れしたいことも出てくる。そういったところを見直していきたいですね。まずは、10回目まで全力疾走します!」

男気溢れる芯の通った「KOBE豚饅サミット®」。今後さらにパワーアップした盛り上がりが期待できそうです。

オープニングセレモニーで開会のあいさつをする老祥記の曹さん

―KOBE豚饅サミット®レポートー
KOBE豚饅サミット®限定、この日しか食べられないスペシャルな豚まんが勢ぞろい!当日のイベントレポート。

さて、ここで「KOBE豚饅サミット®」当日のようすをご紹介しましょう。メインの開催日となった11月10〜11日は、11時スタートにも関わらず、開始前からすでに大行列!

南京町広場も大丸神戸店前も人、人、人!イベントでしか食べられないオリジナル創作豚まんをめざして、老若男女たくさんの人たちが行列をなしていました。筆者は今回初参加でしたが、「KOBE豚饅サミット®」の人気と、これまでの実績に裏付けされた地域への広がりをまざまざと目にしました。

今年の豚まんの中から、注目の豚まんをいくつかご紹介しましょう。

KOBE豚饅サミット®2018。編集部ピックアップオリジナル創作豚まん

太平閣(神戸) 焼きコショウまん 150円

【太平閣(神戸) 焼きコショウまん】

初参加となる創業60有余年の神戸老舗豚まん店「太平閣」。フライパンで豚まんを押し焼きして、コショウ・ごま油を振りかけて完成させる過程は、並んでるときに目でも楽しめました。熱々をほおばると外はカリッとしてコショウが利き、中の具材をより引き立たせてくれます。

重慶飯店(横浜) 麻辣肉まん 200円

【重慶飯店(横浜) 麻辣肉まん】

横浜中華街の有名店「重慶飯店」が今年も出店。四川料理店ならではの花山椒と豆板醤で味付けされた餡がピリッと色のついた甘い皮とマッチします。これはビールが合う!あっという間に行列ができていました。

蘇州林(仙台) 焼き鯖ほぐしまん 300円

【蘇州林(仙台) 焼き鯖ほぐしまん】

仙台から出店した「蘇州林」の焼き鯖ほぐしまん。鯖がこんなにマッチするとは!と唸るほど、白ネギ、オイスターソース、ごま油の味付けも、鯖と皮の柔らかさも絶妙で相性抜群でした。最近の鯖人気にもあやかって、新しい豚まんの世界を味わった気がします。

ケルン(神戸) 兵庫県産雪姫ポークの角煮豚まん 300円

【ケルン(神戸) 兵庫県産雪姫ポークの角煮豚まん】

今年初参加の神戸名門ベーカリー「ケルン」。兵庫を代表するブランド豚、雪姫ポークの角煮豚まんは、甘じょっぱい豚の角煮とこんにゃく、ごまをフォカッチャの生地で包んだ相性抜群の一品。ベーカリーと豚まんのコラボレーションが神戸らしいですね。

KOBE 豚饅サミット 発起人 詰め合わせセット 500円

【老祥記×近藤亭きっしゅや ポルチニー茸とパルミジャーノ・レジャーノ+スモーク鴨のここまでやるか饅】

老祥記は神戸のキッシュ店「近藤亭きっしゅや」とコラボレーション。ポルチニー茸とパルミジャーノ・レジャーノのチーズ、そしてジューシーなスモーク鴨が合わさったとても濃厚でコクのある豚まんです。ワインが飲みたくなる上品な一品です。

【四興樓 汐風香る ふるさとの豚饅】

四興樓の豚まんは、皮のなかに黒い海苔がぎっしりと詰まったあたらしい味覚を感じさせる豚まん。中国の家庭で作られる豚まんだそうです。まるでお惣菜豚まんのような、意外性のある海苔とのマッチングがクセになります。

【三宮一貫樓 松茸・小柱 海山の幸マリアージュ饅

三宮一貫樓は、豪華に松茸を使用して、小柱の歯ごたえと神戸ポークがさらに美味しさを引き立たせます。なんとも贅沢なマリアージュでありながら、やさしい味わいを感じる一品です。

このほか、甲南大学による「応援饅(エールまん)」もすごい行列であっという間に売り切れていたり、全種類の豚まんが食べられる「全店コンプリートのまんぷくBOX」には大丸神戸店前の通りがごった返すほどの人気ぶり。開始早々一時間足らずで整理券が売り切れるほどでした。

当日はイベント限定豚まんを買い求めるために沢山の行列ができました

その場で豚まんをほおばる皆さんの満足そうな表情を見て、食の幸せの連鎖を感じました。そして、個人的には、スペシャルなオリジナル創作豚まんを食べつくした後、なぜか定番のいつもの豚まんが恋しくなるという、不思議なマジックにかかりました。

来年、また『神戸から日本を元気に』という熱い想いとともに「KOBE豚饅サミット®」が開催されます。さらにパワーアップする「KOBE豚饅サミット®」の今後の展開に期待します。

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