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REPORT

2025.10.24

「まちの発展と空港の発展は両輪」関西エアポート神戸藤原副本部長が目指す神戸空港とまちの未来

Text_山﨑 謙 / Edit_伊藤 富雄 / Photo_相澤 誠(ADW Inc.)

神戸は港のまちです。
1867年に開港し150年を超える歴史を誇る神戸港。
そして神戸にはもうひとつ港があります。

それが2006年に開港した神戸空港です。

国内12空港との就航路線を持ち、今年4月には新しい第2ターミナルが完成。国際チャーター便が就航しました。

国際チャーター便は運航開始から13日間の速報値で、約2万3千人の旅客が利用があり、2025年上半期の旅客数は国内線も含めて188万人と過去最多を更新しています。

現在、関西にある大阪国際空港(伊丹空港)、関西国際空港(関空)、神戸空港の3つの空港は「関西エアポート株式会社」(※神戸空港はグループ会社の「関西エアポート神戸」)が運営しています。

今回お話を伺うのは、関西エアポート神戸の立ち上げ期となる2017年から神戸空港に携わり、現在は神戸空港本部の副本部長の藤原大輔(ふじわら・だいすけ)さんです。

伸びゆく神戸空港の今と未来、そして神戸のまちに対する思いをうかがいました。

藤原大輔(ふじわら・だいすけ)
関西エアポート神戸株式会社 神戸空港本部 副本部長

2001年オリックスに入社。2016年キャリアチャレンジ制度を利用して2017年から神戸空港へ。現在の運営会社「関西エアポート神戸」の立ち上げに関わる。関西国際空港での業務を経て、2021年4月から現職。

抜群な立地にある神戸空港

まず神戸空港の魅力を藤原さんにうかがいました。

藤原さん「まず言えるのは、非常にまちに近い都市型空港であるということです。

神戸には山があって、海があって、その間にまちがある。その非常にコンパクトなまちの中心、三宮から18分で空港に来られる。ここまで都会に近接している空港はなかなかないと思っています。

そして広範囲に渡りアクセスがいいこと。

三ノ宮駅から新快速、新神戸駅から新幹線を使えば、大阪・京都、逆に中四国にも簡単にアクセスできる。

非常に恵まれた立地で、いろんなところに移動するのにいい空港だと思っています。

移動拠点として神戸空港や神戸のまちを使っていただけると非常に充実した旅行体験になると思います。」

それで言うと今年(2025年)は大阪・関西万博の需要もあったんじゃないでしょうか。

藤原さん「万博については大阪でやっていることもあって限定的です。各月の利用状況を見ると、やはり大阪国際空港のほうが多いですね。

神戸空港で言うと神戸空港にしか就航していない茨城空港からの便は、万博に行かれるお客様に多くご利用いただいています。」

神戸空港は本当に便利で筆者もよく使っています。三宮から近い、空港がコンパクトで使いやすい。発着時間の設定も良く、行った先での滞在時間が長くとれるのも魅力の一つです。

特に夜は大阪国際空港よりも最終便が遅い時間に出るので、重宝しています。

広範囲にアクセスできるというのも納得です。

私たちが普段から当たり前に使っている在来線、新幹線、バス、そして船。ここまで揃っていて、それらがちゃんと機能している都市は他に思い当たりません。

多様な交通手段で広範囲にアクセスができる神戸は、本当に拠点としてうってつけの場所だと言えます。

大盛況の国際チャーター便

この4月からは国際チャーター便の運航も始まりました。こちらの状況はいかがですか?

藤原さん「この4月からソウル・上海・南京・台北・台中の5つの都市に1日最大6便運航していますが、搭乗率が非常に高くなっています。」

安藤編集長「私の妻も先月神戸空港から韓国へ行って『便利になった』と言ってました。『帰ってすぐ神戸だから安心感が違う』と。」

藤原さん「みなさん、そうおっしゃいますね。国内線とほぼ変わらない感覚で海外へ行ける。

今回国際チャーター便用に第2ターミナルができましたけども、非常にコンパクトなターミナルになっているので、ストレスなく飛行機に乗れる。

帰ってきてもスムーズにさっと出てこられるので、そういう点が大きなターミナルを持つ関西国際空港とは違う、神戸空港ならではのメリットですね。

関西国際空港も神戸も国際線は8割インバウンドみたいな形になっていますが、この良さを知ってもらえば、もう少し日本人のお客様も増やしていけるのではないかと思っています。」

取材時に新しい第2ターミナルを見せていただいたのですが、ちょうど台中行きの便の出発前。搭乗者エリアはインバウンドの方でごった返しており、さながら海外の空港のようでした。

ちなみに第2ターミナルから飛行機に乗るにはターミナルから飛行機にかかる可動橋ではなく、バスに乗るのですが、このバスの一部に、まちなかを走っている神戸市バスと全く同じカラーリングのバスが使われています。

阪急六甲に行きそうなバスが海外への水先案内人。なんとも不思議な感じがしました。神戸空港から国際線に乗るときはぜひ探して乗ってみてください。

航空会社に選んでもらえる強いまちであることが大事

今のお話にも出ましたが、関西には神戸以外にも大阪国際空港(伊丹)、関西国際空港と3つの空港があります。それぞれに差別化していこうという思いはあったりするのでしょうか?

藤原さん「差別化って我々が意図的に差別化していこうと働きかけていくものではなく、あくまで就航する航空会社がどうまちを見てるかによって差別化されていくものなんです。

もちろん空港側から働きかけることもあります。でもいくら働きかけをしたところで、まち自体に魅力がなければ、そもそも就航していただけない。

幸い今の神戸の評価は『神戸って面白いまちだよね。いろんなものがあるよね』というイメージを持っていただいているので、現時点では国際チャーター便はすべてフルサービスキャリアになっています。

そう考えると航空会社に選んでもらえる強いまちであることが大事だと思いますね。」

空港自体の魅力以前に、空港のある「まち」自体にどれだけ魅力があるかが重要なんですね。選ばれる「まち」になるために必要なことは多くありそうです。

神戸はよくも悪くもローカル

空港側から働きかけることもあるとおっしゃる藤原さんですが、藤原さんから見た神戸はどんな「まち」なのでしょうか?

藤原さん「私は生まれも育ちも今住んでるのも西宮です。両親ともに神戸出身でほぼほぼ神戸の人だと自分では思っているのですが、一番思うのはやはり『神戸愛が強い』ということですね。

ただその愛が強すぎて、外から入りにくいというのはあるんじゃないかと思っています。

それはなぜかと考えたのですが、神戸だけでいろんなものが完結してしまうからだと思います。結局、自分の仲間たちだけでやっていけてしまうので。

外部の方を全く受け入れないというわけではない。でも、わざわざ取り入れて一緒にというよりは、よく知っている人どうしでビジネスしたほうがいい、という傾向があるような気がしています。

これはまちとして成熟している証拠ですし、そういった意味では非常に魅力のあるところだとは思うのですが、外の力を受け入れる、あるいは受け入れて消化し、さらなる発展につなげるというところは、もう少しいいやり方があるんじゃないかなと思っています。」

神戸には港がありますし、古くから新しいものを取り入れてきたまちだと筆者は思っていたので、「外から入りにくい」というお話は意外でした。

常に広く外の方たちと接するお仕事ならではの感覚なのかなと思いました。

ただこのお話を受けて、今の神戸の居心地の良さは「神戸だけでいろんなものが完結している」「自分の仲間たちだけでやっていける」という「閉じた」ものでできているのではないか、とも思いました。

これは藤原さんがおっしゃるように「まちとして成熟」していて、神戸の魅力でもあるのだと思うのですが、それだけではいけない。外の力を受け入れて消化することが必要なんですね。

まちの発展と空港の発展は両輪

ここまでのお話を聞いていると、まちの発展が空港に大きく影響を与えているように思います。実際のところはどうなのでしょうか。

藤原さん「『まちの発展と空港の発展は両輪』だと思っています。

まさにそうだなと思った事例が関西国際空港です。

関西国際空港は1994年に開港した大きな国際空港ですが、開港後、大阪・関西の経済がしぼんでいくのとともに『閑古鳥が泣いている』と言われるようになってしまいます。

ところが『観光』というところに焦点を当てたときに、京都や大阪がすごくいいところだということが知れ渡って、まちのポテンシャルと評価が上がっていった。

まちの相対的な評価が上がっていくにつれて、空港のお客様も増えていきました。

こういう例から見ても、まちの評価というのは、空港にとって非常に重要になってきます。

神戸にもそのポテンシャルはあると思っているので、あわてずじっくりと育てていきたい。ステップ・バイ・ステップで大きくしていくのが、非常に重要だなと感じています。」

地道な努力で全国10番目の空港に

今や国内12の空港と海外5つの空港との路線を持つまでになった神戸空港。

しかし過去には大阪国際空港(伊丹)、関西国際空港と近接していてその存在意義自体が問われることもあり、ここまでの道のりは決して順風満帆ではありませんでした。

筆者が覚えている大きいニュースは2010年の大手航空会社の撤退。個人的に「ああ、神戸空港厳しくなったな…」と思ったできごとでした。

しかし、その後新規航空会社の就航が相次ぎ、発着枠も増え、現在の姿になります。

さぞ大変だったかと思うのですが…。

藤原さん「ひとつ大きなベースとしてあるのが、神戸空港に開港当初からある1日60回という発着枠を、撤退や参入がありつつも航空会社に維持していただいたということです。

2018年から関西エアポート神戸が運営をはじめ、2019年には1日の発着枠を60回から80回に増やしましたが、その枠もすぐに埋めていただけました。

神戸空港は現在、地方空港では1位。全国的に見ても8大空港(新千歳・羽田・成田・中部・伊丹・関空・福岡・沖縄)と離島便の多い鹿児島空港に次いで10番目の規模になっています。

これは航空会社がきちんと飛ばし続けていただいたということなのですが、それを可能にしたのは『まちのポテンシャル』だと思っています。

補助金という方法もあったとは思いますが、補助金というのは1回でも手を出すと補助金頼りになってしまい、それがない限り飛行機が飛ばない空港になってしまいます。

もちろんお金は続きませんから、最終的にはやめることになりますが、やめた瞬間に航空会社に来てもらえなくなってしまう。これでは逆効果です。

そうならないように、開港当初から神戸市さんもいろんなところでいろんなプロモーションをやられて、もちろん我々も今いろんなプロモーションをやっています。

きっちり足で稼いで体力をつくっていったということが、今につながっているということだと思いますね。」

神戸市、そして現在の運営会社の関西エアポート神戸の地道な努力が、今の神戸空港を形作っているんですね。

2030年前後の国際定期便就航を目指した動き

現在、国際線はチャーター便だけの神戸空港ですが、2030年前後に国際線定期便の就航を目指しています。これについては今どのような動きになっているのでしょうか。

藤原さん「『3空港懇談会』というものがあり、そこでは『神戸空港の国際定期便の就航は2030年前後を基本とする。』と決められているが、具体的に時期が決まっているわけではないため、これをきちんと決めていきたい。

国際線定期便が運航されるとなれば運用面もより良いものにしていく必要があるかもしれないため、より良くするために不足しているところを我々でとりまとめ、神戸市さんと引き続き連携し、検討・準備を進めていくところです。」

今の国際チャーター便って実証実験みたいなものなのでしょうか?

藤原さん「実証実験という言葉は使ったことないですけど、言われてみたらそうかもしれません。

今のチャーター便は『飛びたい人いますか?』『はーい』で飛んでいただいている。これを定期便でやろうとすると、きちんとルールを決める必要があって、飛びたい人が多かったら調整しながらやっていくことになります。

今回チャーター便をやってみてわかったのは、日本の航空会社だけでなく、海外の航空会社も非常に神戸に興味を持っていただいているということです。

そういった意味では今回やってみてよかったですし、これが2030年前後の国際線定期便の就航につながっていくんだろうなと感じています。」

2030年前後就航予定の国際定期便は1日40回の発着枠を設けていて、これが実現すると神戸空港は福岡空港に次ぐ西日本の拠点空港になります。

就航する路線は決まっていませんが、どこへ行くことができるのか、どんな国からどんな人たちが来てくれるのか、今から楽しみです。

押し寄せるインバウンドをどうしていくのか

京阪神3都市のなかで「インバウンド一人負け」と言われることが多い神戸。

オーバーツーリズムでさまざまな問題があり「このままでもいいんちゃうん?」という思いも拭えません。それでも多くのインバウンドを受け入れる空港としてはその存在を無視することはできません。

その点を藤原さんはどのように考えてらっしゃるのでしょうか。

藤原さん「神戸空港に国際定期便が就航すれば、インバウンドの方は間違いなく増えます。その人たちに対応するのは市民です。なので、今のうちから準備をしていただけたらなと思いますね。

一方で、神戸空港に来るインバウンドの方たちを、すべて神戸や三宮で受け入れる必要はないとも思っています。

『インバウンドしかいません』みたいなまちにする必要は全くなくて、必要に応じてインバウンドを組み込む。

これは私の意見ですけれども、インバウンドの集積地みたいなのを作ればいいと思っています。日本人で成り立つエリアとインバウンドの人たちで成り立つエリア。

その棲み分けをした上で三宮にも来てねというようなことを、地元民を圧迫しないよう戦略的に考えていったら、オーバーツーリズムみたいなことにはならないと思います。」

昔の外国人居留地みたいな感じでしょうか。

藤原さん「そうですね。それに近いかもしれません。そういうことを戦略的に考えていったほうがいいと思います。

あと、インバウンドの方たちのニーズをしっかり拾い上げることも大事だと思っています。

今来られているインバウンドの方たちが、神戸に対して足りないと思っていることがいくつかあって、夜開いている店が少ないとか、Wi-Fiがつながらないとかが、声としてあがっている。

そういうところを改善して、インバウンドの方たちにも満足してもらえるようになればいいなと思います。

最近はマナーの問題もありますが、全てがそうではないですし、せっかく来ていただいたからには嫌な思いをして帰ってほしくない。

外国語ができなくても、今はスマホの翻訳アプリもありますし、日本人と同じおもてなしをして、いい思い出を持ち帰っていただきたいなと思いますね。」

お話を聞いていてそうだなと思うところはあるんですが、それでも今の京都や大阪ミナミの現状を見ていると、果たしてそれで大丈夫かなという懸念も正直あります。

藤原さん「そこで我々がやっていこうとしているのは、神戸から西の姫路や岡山、四国へどれだけお客様をお送りすることができるか。これに今、必死に取り組んでいるところです。

先日、県知事が韓国でプロモーションを行いました。それは『神戸に来て』というのではなくて、ゴルフツアーの売り込みです。神戸の周辺にはゴルフ場がいっぱいありますからね。

同じような取り組みとしては、神戸商工会議所が旗を振って姫路までの商工会議所と連携して、各都市の面白そうなところをプロモーションしてもらうというようなことをしています。

さらには周遊ですね。例えば愛媛の松山空港で入国して、瀬戸内を周遊して、最後神戸に来て、神戸空港から帰国するというツアー。

これは神戸にもお金は落ちるけれど、ずっと神戸にとどまらせない。

もちろん大阪に、京都に…という需要も大きいでしょうけど、それよりも新たなマーケットである西の開拓をしたい。神戸だからこそできることが必要だと思っています。」

周遊は広範囲のアクセスに長けた神戸の立地を最大限に活かせるとてもいい取り組みですね。

海外の方向けだけでなく、国内の方に向けてやっても受けそうな気がします。

まちの発展のために私たちができること

2030年前後の国際定期便就航に向けてさまざまな取り組みを行っている神戸空港。

「まちの発展と空港の発展は両輪」とのお話もありましたが、まちの発展のために私たちができることはあるのかをうかがいました。

藤原さん「神戸のまちは神戸のまちで、自らの足で歩いて発展していかないといけない。それには、それぞれがやっている商売をきちんと大きくしていくということが重要だと思います。

また今後は間違いなくインバウンドの方たちがいらっしゃるので、新しいものをどんどん嫌がらずに受け入れていくという考え方が必要になってくる。

じゃあどうしていくのかと言うと、『おもてなしをしましょう』ということになると思います。

いらっしゃったお客様に対しては国籍にかかわらずおもてなしをして、自らも潤って大きくなっていく。

そういう小さな力が集まって、まち全体が発展していくと、海外の航空会社が神戸に興味を持ってくれているように、新たな外資の企業が『神戸にはポテンシャルがある』と思って来てくれて、新たな産業が生まれるかもしれない。

そうするとまたまちの発展につながっていくと思うので、そういうことを地道にやっていくことだと思います。

あとは営業になってしまいますけど、神戸空港を使ってください。

我々は来ていただいた方を西に拡げていく活動をして、より多くのお客様を呼びたいと思っているので、ぜひ使って応援していただきたいです。」

Photo by KOBEZINE

「まちの発展と空港の発展は両輪」と藤原さんはおっしゃっていましたが、逆に言うと空港の発展はまちの発展にかかっています。

まちに魅力があるから航空会社はその場所を選んでくれているわけで、そうでなければどこからも飛行機は飛んできてくれません。

となると、私たちひとりひとりが神戸に来てくれた人たちにしっかりとおもてなしし、また神戸に来たいと思ってもらうことが、神戸のまちの発展と空港の発展のために必要な活動だと言えます。

そしてなにより私たち自身が神戸空港を使って国内や海外の各地へ行き、「自分のまちにはいい空港がある」ということを行った先で伝えていくこと。このことがより神戸のまちと神戸空港が発展していく一番の活動になるはずです。

さぁ、神戸空港から空の旅へ出かけましょう!

三宮一貫樓 安藤からひとこと

今回のKOBEZINEいかがでしたか?
藤原副本部長のお話を聞き、神戸という街の魅力を再発見した!そんな気持ちになりました。改めて素晴らしい街の住人であることに誇りを感じた次第です。

2030年ごろの神戸空港と街はどんな変化を見せてくれるのでしょうか?今から楽しみでなりません。

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