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KOBEZINE

INTERVIEW

2019.1.5

三宮一貫樓の「豚まんへのこだわり」に迫る

Text_Masami Iwasaki / Photo_Makoto Aizawa,Junpei Iwamoto

「KOBE豚饅サミット®」がある神戸は豚まんカルチャーにこだわる

神戸の「食」「ヒト」「コト」「街」の魅力を伝えていくウェブマガジン「KOBEZINE」、その第一回目は「三宮一貫樓の豚まんへのこだわり」です。

JR神戸線元町駅の南、徒歩わずか100歩、三宮センター街入り口にあるのがお馴染み三宮一貫樓本店です。

ガラス越しに見えるは素早い手つきで黙々と次から次へと豚まんを作るスタッフたち。神戸のごく普通の日常、今も昔も変わらない三宮一貫樓がそこにあります。

ほとんどのお客さまが買い求めるのは、1個190円の「豚まん」。もちもちふかふかの生地に、豚肉と玉ねぎがたっぷり。口いっぱいに甘い味が広がる三宮一貫樓の豚まんは、まさに神戸のソウルフードです。

平日・休日にかかわらず、店頭には老若男女のお客さまが行列をなし、売り場のすぐ横のスタンドで買ってすぐ食べる人もよく見かけます。

神戸の人たちにとってはごく当たり前のこの光景も、一年半前に関東から神戸に移住した筆者には新鮮で、それでいてどこか懐かしさを感じます。

JR神戸線元町駅から徒歩100歩の三宮一貫樓本店

神戸の友人に尋ねてみれば「私は●●店の豚まんが好きやなあ」「うちは昔からオカンが●●の豚まんをよぉ買うて来てたで」と、それぞれにお気に入りの豚まんや食べ方があるみたい。

神戸ではそうしたローカルの食文化として発展しつつも、年に一度、神戸はもちろんのこと、全国各地の豚まん店が一堂に会し、「KOBE豚饅サミット」なる一大イベントを開催して、豚まんカルチャーの浸透を図る取り組みも行われています。

今回、お話をうかがうのは、三宮一貫樓の常務取締役、安藤孝志さん。そこには、豚まんの美味しさはもちろん、「作り方」「売り方」「見せ方」と全方位に渡ってこだわりが詰まっていました。

野球で例えるなら「豚まん」は直球。シンプルでストレートにこだわる

開口一番、安藤さんが力を込めて話したのは、まさに三宮一貫樓の真髄ともいえる豚まんへのこだわりでした。

「三宮一貫樓の豚まんのこだわりは、”凝りすぎないこと”。シンプルな豚肉と、玉ねぎと、小麦粉で作った生地で作る。いかにシンプルを極めるかです。

僕も若い時には、創作でいろんなもの作ったらいいんちゃう?と、いろいろ色々入れたがった頃もありました。けど、野球に例えるなら、豚まんは「直球」。直球はあくまでもシンプルでストレートなんですよ。その他の企画ものは直球を活かすための「変化球」。お客さまと店が接触するためのツールでもありますね。」

豚まんへのこだわりを語る三宮一貫樓の安藤孝志常務

一貫樓では、直球の豚まんの他に、「カレーチーズまん」や「ぼっかけまん」、「みそ豚まん」、「ピリパオ」など、変化球としてアレンジされた旬の豚まんも期間限定で販売しています。

看板商品である「豚まん」をいかに美味しく極めるか。その美味しさの秘密を探るなかで、最も重要なのが「豚肉」「玉ねぎ」「生地の小麦粉」の3つの材料です。

「豚肉」は、あくまで国産にこだわっています。かつて外国産を扱った際には、味が違うとお客さまからの指摘もあり、当時グラム100円も高い国産に再び戻したことも。今は信頼する南京町の卸業者から調達しています。

「玉ねぎ」は、水っぽくなく硬くないもの玉ねぎが豚まんには最適です。三宮一貫樓では、産地によって異なる品質を見極めて、豚饅に最適な厳選した玉ねぎを使用しています。ちなみに、一ヶ月で25トンもの玉ねぎを使用すると言いますから、その膨大な量に驚かされます。

「うちでは一日に8,000〜10,000個の豚まんを手作りしています。以前、ある八百屋さんに玉ねぎの卸を相談した時は、規模が大きすぎると断られました(笑)。」

こだわりの国産「豚肉」を使った餡をひとつづつ手作業で包んでいきます

そして、生地を作るための「小麦粉」には、さらなるこだわりがありました。

「生地に使用する小麦粉は、実は高級洋菓子にも使われる上級の小麦粉を使用しています。そうすることで、生地がもっちりするんです。先代が代々使用してきた小麦粉を受け継ぎながら、いくつかの種類を独自の配合率でブレンドしています。」

高品質の「小麦粉」を使用することで柔らかくもっちりしながらもしっかりした生地になり、そこに厳選した「豚肉」と「玉ねぎ」がうまく絡み合うことで、具材の甘みと美味しさが引き立ちます。

とはいえ、原料にこだわりすぎてコスト高にならないよう、あくまでも庶民の食べ物として、品質とコストのバランスを見極めているのが、三宮一貫樓の豚まんです。

「試行錯誤をしながらも今に至るのは、常に美味しいと思ってもらえる豚まんを追求してきたからだと思います。」

生地は高級洋菓子作りにも使われる上質な小麦を使用

徹底した手作りのために深夜から動き出すチームプレーにこだわる

今も昔も変わらない味を守り続ける豚まんを、一番最初に始めたのは、三宮に出店した1966年。「うちにも目玉商品を」と、初代料理長だった山本さんが開発しました。

一日に10,000個も作るようになった今でもあくまで手作りにこだわり、手間と労力を惜しみません。兵庫区荒田町にある本社工場では、毎日、真夜中の2〜3時から作業が始まります。

「玉ねぎは、毎日使い切りにしないと匂いが変わって足も早くなってしまうんです。だから、真夜中から玉ねぎをみじん切りに裁断して、生地を捏ねる作業をしています。専任の製造スタッフはよくやってくれています。もう30年も継続して働いている人もいますし、私が幼かった頃からいる人も多いんです。頭が上がりませんよね(笑)。」

豚まんの仕込み作業は毎日真夜中から始まります

今回、工場を見学した時には、5名のスタッフが生地を捏ねてカットし、素早い手つきで餡を包んで豚まんを作っていました。今では一次加工の生地を捏ねる過程で機械を導入し効率化を図っていますが、各店舗へ配送した後に二次加工でさらに生地を捏ねる工程はいまだに人力のみ。そのあと、手練りで具材を詰め、せいろで蒸して、ようやく三宮一貫樓の豚まんが完成します。

「機械を導入して2〜3年になりますが、いまだに生地についての葛藤はありますね。各店舗には熟練のスタッフがいて、彼らが先頭になって指揮を執っています。その中で最善の方法を求めて、日夜、試行錯誤しています。」

膨大な量の製造を可能にする背景には、長年のスタッフと若手スタッフ、そこにトップも巻き込んだチームプレーがありました。

生地についてのこだわりを語る安藤常務

ワクワク感をそそる「実演販売」とアイデア商品の「常温」にこだわる

お客さまに「手作りの豚まんを食べたい!」と思っていただく秘策、それが「実演販売」です。エンターテインメント性があり、目の前で作られる手先の所作、具材、豚まんの湯気、せいろの積み重なりなど、臨場感たっぷりの工程から、ふかふかの豚まんが脳内イメージとして広がります。

「実演販売も、三宮本店出店の際に先代が生み出しました。豚まんを包んでいるところを見て、並んでいるお客さまはあれが食べられるんだとワクワクする。そういう意味では、商店街の入り口角に立地していたのが功を奏したのかもしれませんね。」

ダイナミックで臨場感溢れる手作りのプロセスをそのまま見せることは、最大のプロモーションでもあり、安心を届ける手段でもあります。

店頭ではガラス越しに実演販売が行われています

一方、阪神三宮駅店には実演販売をするためのスペースがありません。そのため当初は自信がなかったそうですが、嬉しいことに予想以上の売り上げを上げています。

それは、三宮一貫樓が今まで積み上げてきた歴史と、お客さまの期待の表れと言えるかもしれません。そして、今では神戸空港や新幹線の新神戸駅など、神戸のあらゆる玄関口にも店舗を構えるまでに広がっています。

ところで、三宮一貫樓には「常温」の豚まんがあります。できたてほやほやの熱々ではない豚まん。常温なので新幹線の車内で匂いを気にすることもありません。そのため、最近では常温を求めるお客さまが増えているそう。

冷蔵で3日間、冷凍で10日間、日持ちします。電子レンジで温めて食べても蒸しても美味しい優れものです。
実はこの常温商品のアイデアも、日々、お客さまに喜ばれる商品開発に知恵を絞っている際の副産物として生まれたそうです。24時間365日、豚まんにすべてをかけているからこそのヒット商品と言えそうです。

三宮一貫樓ならではの「遊び」にこだわる

最後のこだわりは商品お渡し用の紙袋とパッケージ。三宮一貫樓のコーポレートカラーであるオレンジをベースに、丸みのあるロゴと豚のキャラクターのイラストが入った親しみあるデザインです。でも、このオレンジは、中華や豚まんのイメージからは少々意外な気もします。

そのきっかけは、JR三ノ宮駅に店舗を構えた時、当時の「ザ・中華」風の真っ赤な紙袋を恥ずかしそうにカバンにしまうお客さまがいたことでした。

そこで、手に提げていても自然な感じで親しみのあるデザインに変更しました。お客さまのちょっとした行動がヒントになったのです。

「今では企画ものにはちびがいたり、ピンクのキャラクターがいたり、企画担当者はかなり遊んでますよね(笑)。でも遊べるって、三宮一貫樓の立ち位置なのかなって思うんです。うちの規模ならいろいろと自由なことができる。そこを追求していきたいんです。」

三宮一貫樓の公式キャラクター「トンちゃん」「トコちゃん」がデザインされたパッケージ

本店前のスタンドにも、その精神が現れています。店頭で豚まんを買ったお客さまができたてをその場で食べる。神戸の中華街で有名な南京町にはよくあることですが、商店街では珍しい光景です。まして、東京や首都圏ではなかなか見かけません。

「あれも実は副産物ですね。阪神淡路大震災で本店が全壊した後、ずっとプレハブで営業をしていた時に、店頭でいいから食べたいという声にお応えして外にブースをこしらえた、その名残りです。その後、商店街のリースラインを超えないように、スタンドを置くようになったんです。」

三宮一貫樓本店の店先ではスタンド形式でできたての豚まんを食べることができます

スタンドのテーブル上には酢醤油、ウスターソース、醤油の三種類のソースが置かれています

長い歴史を持つからこそ、商品にはこだわりを持つ。そのこだわりの中で生まれてきたさまざまなヒントを生かし、そこから生まれる副産物にもこだわりを持つ。長年、市民に愛されてきた豚まんに隠されたこだわりを知ることで、美味しさに一層深みが増すのではないでしょうか。そしてそれが、本当の味わいというものかもしれません。

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